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未来の経営戦略を映し出す
~「機会とリスク」から描く中長期の企業価値向上~

前回のインタビューでは、当社グループが人的資本開示において重視している「開示」と「実践」のLINKについてお話ししました。
今回と次回は、人的資本開示における2つの基本方針を深掘りしていきます。

まずフォーカスするのは、1つ目の方針である「外部の要請に即して適切に開示すること」。
日々アップデートされるフレームワークをどのように捉え、どう開示に向き合っているのか。

当社グループの実際の開示ステップを交えながら、そのリアルな舞台裏に迫ります。

「4つの柱」を捉え、日本の将来推計人口から未来を逆算

前回、外部フレームワークをいち早く捉えることが大前提とおっしゃっていました。
具体的にどのように適応していったのでしょうか?

近年、企業の持続可能性を長期的に判断したいというグローバルな投資家からの要請を受け、
サステナビリティ開示の義務化が進んでいます。
現時点ですべての企業に直ちに適用が求められているわけではありませんが、
私たちは、将来的に求められる開示水準を見据えたとき、早い段階から対応を進める必要があると考えました。

また、私たち自身が企業の人的資本経営を支援する立場だからこそ、
自社でも実践し、そのプロセスや考え方を開示を通じて示していくことに意味があると考えています。
単に基準へ対応するのではなく、人的資本経営に取り組む企業にとっての一つの参考事例となれるよう、
試行錯誤を重ねながら整備を進めていきました。 

まずは、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの柱に基づいて開示できるよう整理していきました。

なかでも、今回の開示で頭を悩ませたるのが「戦略」の開示におけるシナリオ分析でした。
単に「今、社内で何が起きているか」を並べるだけでは、中長期の企業価値を語る戦略にはなりません。
未来の社会構造の変化を予測し、自社がどんな影響を受けるのかを逆算して考える必要があります。

そこで私たちは、国立社会保障・人口問題研究所による「日本の将来推計人口(令和5年推計)」を参照先として採用しました。

対象範囲は国内グループ全体。時間軸は「2028年度(短期)」と「2035年度(中期)」に定義し、
日本の人口動態という確実に来る未来のシナリオに準拠して、
自社における「リスク」と「機会」を徹底的に特定していきました。

網羅的なリスト化から、財務影響を見極める「4つのプロセス」

人口動態という大きなテーマから、自社固有のリスクや機会をどのように抽出したのか。
その具体的なプロセスを教えてください。

フレームワークに沿った開示を、単に『ルールを満たすため』で終わらせないために、 私たちは4つの実施プロセスで進めていきました。

まず第1ステップとして、当社グループのバリューチェーン全体を対象に、人的資本に関するリスクおよび機会を、網羅的に整理しました。
単に「人口減少によって採用競争が激化する」といった表面的な論点だけでなく、
幅広い視点から将来的にどのような影響が生じ得るのかを洗い出していきました。

次に第2ステップとして、その膨大なリストの中から、特に自社への影響が大きいと考えられる項目を抽出しました。

そして第3ステップとして、外部環境や自社状況を踏まえ、財務影響の算定ロジックおよび必要データを整理しました。

その上で、最もこだわったのが最後の第4ステップである「財務影響の算定と、当社グループにおける重要度の評価」です。
第2ステップで洗い出した項目すべてにおいて、財務インパクトを計算。
たとえば、「エンゲージメントスコアと企業業績」に関する当社の研究結果なども参照し、
エンゲージメントが低下した場合にどのような業績インパクトがあるのかを算出しました。

「リスクと機会」の特定から、中長期の企業価値向上へとつなぐ

実際に特定された「リスク」と「機会」には、どのようなものがあるのでしょうか?

労働力人口の減少が進む中、多くの企業にとって「人材確保」は避けられない経営課題になっています。
当社グループにおいても、採用難や離職率の上昇といった直接的な影響だけでなく、
その先にある「エンゲージメント」「人材力」の低下を重要なリスクとして捉えています。

特に私たちは、エンゲージメントや人材力の低下が、サービス品質や顧客提供価値、
さらには企業成長そのものに大きく影響すると考えています。

一方で、こうした環境変化は当社にとって大きな「機会」にもなり得ます。
当社グループは、人的資本経営やエンゲージメント向上を支援する立場として、日々多くの企業変革に向き合っています。
だからこそ、自社自身が人的資本経営を実践し、エンゲージメント、人材力の向上を実現できれば、
その知見やノウハウはより実践的な価値として顧客企業へ還元できると考えています。

つまり、自社の人的資本経営を磨き続けること自体が、サービス価値の向上や競争優位性の強化にもつながっていく。
私たちは、そのように捉えています。

今回の開示においては、先行事例がほとんどなく、試行錯誤の連続でした。
特に、どのような粒度・構成で開示すべきかについては、手探りで整理を進めていった部分も少なくありません。
今年の3月に「人的資本可視化指針(改訂版)」が公表されましたが、
内容を確認した際、自分たちが進めてきた方向性や整理の考え方が大きく外れていなかったことに、
一定の手応えを感じたのを覚えています。

私たちがここまで踏み込んでリスクと機会を特定し、開示を続けるのは、
人的資本こそが中長期の企業価値を左右する競争優位の源泉だと考えているからです。
そして、人的資本経営を支援する立場だからこそ、自社でも実践し、
その試行錯誤も含めて社会に開示していくことに価値があると考えています。 

外部の要請に正しく応えるということは、単なる義務への対応ではありません。
自社の未来を予測し、経営戦略をより強固なものへと磨き上げていく。
そのための重要なプロセスだと捉えています。

シナリオ分析のプロセスや、リスク・機会の全貌を公開中

今回ご紹介した「シナリオ分析」の具体的なプロセスや、リスクと機会の全体マップは、
当社グループの「Human Capital Report」にて詳細に公開しています。

日々の実践や思考のプロセスを開示することを通じて、いかに企業価値の向上へとつなげていくのか。
そのリアルな開示の実物をご覧いただけます。ぜひご覧ください。

https://www.lmi.ne.jp/ir/library/h_c_report/pdf/h_c_report_2025.pdf

ありがとうございました。

次回(第3回)は、もう一つの基本方針である「開示に『実態』を伴わせること」を深掘りします。
今回特定したリスクや機会に対して、どのように現場を巻き込み、
リアルな「実践」を積み上げているのか。
その具体的な運用プロセスに迫ります。どうぞお楽しみに!

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