人的資本マネジメント
当社グループは、サステナビリティ開示の強化に向けて、2025年より、気候変動に加えて人的資本についてもガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標に基づく情報発信を開始いたしました。特に「戦略」項目においては、日本の将来推計人口に基づくシナリオ分析を実施し、当社グループの事業に及ぼしうる重要なリスクと機会を特定しました。これらの分析結果は、今後の経営判断やリスクマネジメントの高度化に反映していきます。今後も、継続的な改善を図りつつ、人的資本マネジメントの強化に努めてまいります。
ガバナンス
取締役会を経営の基本方針や重要課題ならびに法令で定められた重要事項を決定するための最高意思決定機関として位置付け、原則月1回開催しております。取締役会においては、サステナビリティに関する重要方針を含む経営戦略を審議・決定し、持続可能な企業価値の向上を図っております。また、事業経営に迅速な意思決定と柔軟な組織対応を可能にするため、取締役、常勤監査役、執行役員及び事業責任者等が出席する経営会議を原則月2回開催しております。人的資本の最大化に向けた取り組みについて、コーポレート法務部門が横断してリスクを分析・評価して、経営会議において定期的に報告し議論するとともに、取締役会が係る業務執行を監督しています。
なお、当社グループの事業特性上、人的資本が多様な資本の価値創造の源泉であることから、取締役会や経営会議においては、人的資本に関する議案が占める割合が高くなっています。
取締役会および経営会議の議案内容(2024年)
また、当社グループでは、社員のモチベーションを企業の成長エンジンとする「モチベーションカンパニー」の経営において、事業戦略と組織戦略を対等に位置づけています。この考え方を体現するため、最高経営責任者(CEO)が最高人事責任者(CHRO)を兼務しています。また、取締役会の構成員は、組織・人事に関して豊富な経験を積み重ね、事業戦略と組織戦略をリンクさせた経営判断を実行できる人材を選任しています。
スキルマトリクス
| 氏名 | 現在の地位 | 企業経営 | 専門性 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 経営者 経験 |
組織 人事 |
業界 知見 |
財務・ 会計 |
法務・ リスクマネジメント |
研究・ 開発 |
DX・IT | 営業・ マーケティング |
||
| 小笹 芳央 | 代表取締役会長 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
| 坂下 英樹 | 代表取締役社長 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
| 大野 俊一 | 取締役 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
| 中村 有里 | 社外取締役 | ○ | ○ | ○ | |||||
| 原 ゆかり | 社外取締役 | ○ | ○ | ○ | |||||
| 栗山 博美 | 監査役 | ○ | ○ | ||||||
| 冨永 兼司 | 社外監査役 | ○ | ○ | ○ | |||||
| 松岡 保昌 | 社外監査役 | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||
- ※各人の有する知見や経験を4つまで記載しております。上記一覧表は、各候補者の有するすべての知見や経験を表すものではありません。
戦略
シナリオ分析の前提
当社グループでは、人的資本が当社グループの事業にもたらす中長期的なリスクと機会を評価するためにシナリオ分析を実施しております。本年度は国内グループ全体を対象とし、将来影響が想定されるリスクと機会を特定し、2028年度・2035年度における財務影響額を試算しました。シナリオの前提として、「日本の将来推計人口」を参照しました。
今回実施したシナリオ分析の前提は、以下のとおりです。
| 対象範囲 | 国内グループ全体 |
|---|---|
| 時間軸の定義 | 短期:2028年度、中期:2035年度 |
| 想定シナリオ | 日本の将来推計人口に準拠 |
| 参照先 | 国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(令和5年推計)」 |
シナリオ分析の実施プロセス
シナリオ分析として、まず当社グループのバリューチェーン全体において想定される人的資本に係るリスクおよび機会をリスト化したうえで、その中から特に自社への影響が大きいと考えられる項目を抽出しました。次に、抽出したリスクと機会の各項目に関して、想定される外部環境や当社グループの状況を参照しながら検討し、財務影響算定のベースとなるロジックおよび算定に必要な社内外のデータを整理しました。収集したデータにて実際に財務影響を算定した後、当社グループにおける重要度の評価を実施しました。
財務影響の分析結果
シナリオ分析にて特定したリスクと機会と財務影響、および対応方針は下記の通りです。 今後も継続的にシナリオ分析を実施することでさらなる精度向上に努め、将来見通しを経営戦略の検討プロセスに組み込んでいくことにより、不確実な将来世界に対応できるレジリエンス性を高めてまいります。
| 分類 | 項目 | 自社への影響 | 影響度 | 対応方針 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 短期 | 中期 | カテゴリ | 内容 | |||
| リスク | 労働力人口の減少 | 労働力人口の減少により、計画採用人数を確保するために採用基準を緩和することで、 エンゲージメントと人材力が低下する |
大 | 大 | エンゲージメント | 「モチベーションクラウド エンゲージメント」を活用した 定期的な組織診断と改善 |
| 人材力 | 「モチベーションクラウド ロールディベロップメント」を活用した 定期的な360度評価と研修を通じた改善 |
|||||
| 採用 | 「理念」に共感した人材の採用 | |||||
| 労働力人口の減少 | 労働力人口の減少により、採用難易度が高まることで、 採用コストが増加するほか、採用人数が減少する |
中 | 中 | 採用 | 採用コンサルティングノウハウの活用 | |
| 制度 | 奨学金支援制度の導入 | |||||
| デジタル改革 | DXの加速に伴う高度なエンジニア需要の高まりにより、採用難易度が高まることで、 採用コストが増加するほか、採用人数の減少に伴って開発スピードが低下する |
小 | 小 | 採用 | エンジニア新卒採用の実施 | |
| 風土 | 定着率の向上に向けた組織施策の実行 | |||||
| 人材の 流動化 |
人材流動化に伴う転職市場の活性化により、新卒採用で補いきれない離職が発生することで、 事業活動が停滞する |
中 | 中 | エンゲージメント | 「モチベーションクラウド エンゲージメント」を活用した 定期的な組織診断と改善 |
|
| 人材力 | 「モチベーションクラウド ロールディベロップメント」を活用した 定期的な360度評価と研修を通じた改善 |
|||||
| 人材の 多様化 |
労働力が多様化する中、多様な人材の採用が進まないことで、 イノベーションや事業開発が停滞する |
小 | 中 | 制度 | 時短勤務制度をはじめとしたライフイベントに対する支援の拡充 | |
| 採用 | 社外取締役の多様化や中途採用の強化 | |||||
| 政策・ 法規制 |
人権尊重に関する法令や社会的要請が高まる中、 海外展開などに伴うバリューチェーン拡大の過程で対応が遅れ、 社会的ブランドが低下する |
小 | 小 | 育成 | コンプライアンス研修の実施 | |
| 制度 | グループ内のルール「LM六法全書」の定期的な更新と共有 | |||||
| 機会 | 産業構造の変化 | 人的資本経営への注目が高まる中、自社で実践経験を積み重ねることで、 顧客への還元機会が拡大する |
中 | 大 | 風土 | 全社総会における個人・プロジェクト・組織の表彰を通じた 組織変革成果の共有 |
| 風土 | 「モチベーションクラウド シェアリング」を活用した 社内報などによる情報共有 |
|||||
| 政策・ 法規制 |
人材に関する法規制の強化に対して、先行して人的資本経営の実践と開示を続けることで、 社会的ブランドが向上する |
中 | 中 | 公表 | ・ISO 30414の継続的な認証取得 ・有価証券報告書における発信の強化 ・Human Capital Reportの発行 |
|
| 人材の 多様化 |
ワークスタイルの多様化が進む中、柔軟な働き方を提供し続けることで、 従業員の定着率が向上する |
小 | 小 | 制度 | ハイブリッドワーク(Compatible Work)や ライフイベントサポートなど制度の充実化 |
|
| 産業構造の変化 | 業界再編が進む中、これまで培ってきたPMIノウハウを活用してM&Aを加速することで、 事業シナジーが早期に発現する |
中 | 中 | 風土 | 組織コンサルティングナレッジを活用したPMIの推進 | |
| デジタル改革 | 生成AI技術の発展が進む中、エンゲージメントの高さを活かして生成AIを積極的に活用することで、 生産性が向上し、新たなイノベーションが創出される |
中 | 中 | 生産性 | 全社員のAI活用レベルの向上 | |
| 労働力人口の減少 | 労働力人口の減少に伴い後継者不足が深刻化する中、 コンサルティングノウハウを活かして後継者育成に取り組むことで、 経営候補準備率が向上し、企業の成長スピードが加速する |
中 | 中 | 育成 | 階層別の選抜型プログラム「TOP GUN SELECTION」の開催 | |
| 人材の 多様化 |
個人のキャリア形成意識が高まる中、キャリア支援の機会を積極的に提供することで、 従業員の定着率が向上する |
小 | 小 | 育成 | i-Company Branding Supportによる異動や提案機会の創出 | |
| 政策・ 法規制 |
世の中の給与水準が向上する中、継続的にベースアップを実施することで、 従業員の定着率が向上する |
小 | 小 | 制度 | 継続的なベースアップの実施 | |
リスク管理
当社グループは、グループ経営に関するさまざまなリスクを審議するため、主要なリスクの状況について定期的にモニタリング・評価・分析し、グループ各社に必要な指示、監督を行うとともに、その内容を定期的に取締役会に報告する体制を整えております。人的資本に関するリスクについては、影響範囲や関連する事業の規模を考慮した重要性評価を実施したうえで、リスクを特定するとともに、現行・将来的な政策動向も考慮に入れた評価を実施しております。これらのリスクは、リスクの影響度や発生可能性に基づき重要性を評価し、優先順位を定めて対応方針を関係部門と連携して検討、実行しております。なお、人的資本リスクに関する特定・評価・管理の一連のプロセスは、全社リスク管理体制の一部として統合的に運用されており、他の戦略的・財務的リスクと同様に、グループ全体のリスク管理の枠組みに基づいて管理・報告されています。
指標と目標
当社グループのビジネスはソフトビジネスであり、人的資本がさまざまな資本の価値創造の源泉であると考えております。そのため、顧客価値を最大化する事業戦略と人的資本価値を最大化する組織戦略を対等に捉え、双方をリンクさせながら経営をしております。組織戦略においては、採用・育成・制度・風土への投資を通じて、人材力と組織力(エンゲージメント)を高め、人的資本投資のリターンを示す生産性を最大化させることに注力しています。
KGI:生産性
人的資本投資のリターンを示す生産性の重要指標として、「人的資本ROI※」と「社員1人当たりの売上総利益」を掲げ、事業戦略と組織戦略のバランス度合いをモニタリングしております。
| 2022 | 2023 | 2024 | |
|---|---|---|---|
| 人的資本ROI(%) | 41.1 | 48.4 | 53.5 |
| 社員1人当たりの売上総利益(千円) | 9,347 | 10,595 | 12,065 |
- ※人的資本ROI=調整後営業利益÷人的資本投資額。
調整後営業利益は、営業利益から、のれん、使用権資産、固定資産の減損など一時的要因を排除した事業の業績を測る利益指標。
人的資本投資額は、従業員の給与や賞与、法定内外福利費、通勤交通費、その他役員報酬等を含んだ費用の合計で算出。
KPI:人材力
組織の求める能力と個人の保有する能力の合致度を示す「人材力」を重視しております。人材力においては、各階層に求められる役割の遂行状況について、周囲の期待と満足の一致度合いをもとに算出したスコアに応じて11段階でランクづけした「役割サーベイ・レーティング」を、注力指標としてモニタリングしております。
| 2022 | 2023 | 2024 | ||
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 対象者数(名) | 1,137 | 1,378 | 1,363 |
| Aランク以上(名) | 646 | 764 | 758 | |
| 割合(%) | 56.8 | 55.4 | 55.6 | |
| 管理職以上 | 対象者数(名) | 146 | 156 | 165 |
| Aランク以上(名) | 110 | 114 | 122 | |
| 割合(%) | 75.3 | 73.1 | 73.9 | |
KPI:組織力(エンゲージメント)
組織のありたい姿と個人のモチベーションの合致度を示す「組織力(エンゲージメント)」を重視しております。エンゲージメントにおいては、従業員の会社・上司・職場への期待と満足の一致度合いをもとに算出したエンゲージメントスコアに応じて11段階でランクづけしたエンゲージメント・レーティングを注力指標としてモニタリングしております。
| Division | 法人名 | レーティング | ||
|---|---|---|---|---|
| 2023年2月 | 2024年2月 | 2025年2月 | ||
| 組織開発Division | (株)リンクアンドモチベーション | AAA | AAA | AAA |
| (株)リンクソシュール | ― | ― | AAA | |
| 個人開発Division | (株)リンクアカデミー | AAA | AAA | AAA |
| (株)モチベーションアカデミア | AAA | AAA | AAA | |
| マッチングDivision | (株)リンク・インタラック | AAA | AA | AA |
| オープンワーク(株) | AA | AA | AA | |
| (株)リンク・アイ | AAA | AAA | AAA | |
- ※1 エンゲージメントスコアは(株)リンクアンドモチベーションの登録商標です(登録商標第6115383号)。
- ※2 エンゲージメント・レーティングは株式会社リンクアンドモチベーションの登録商標です(登録商標第6167649号)。
- ※3 延べ12,650社/約509万人のデータをもとに算出。
- ※4 その他事業を行う(株)リンクダイニングは除く。
詳細・その他指標は、データページをご参照ください。