ニュースリリース

お知らせ

大手企業管理職の非財務資本に関する意識調査結果を公開

~現場と人事の認識のギャップが明らかに~

2022.11.29

株式会社リンクアンドモチベーション(本社:東京都中央区、代表:小笹芳央、証券コード:2170、以下当社)は、大手企業※1で管理職を務める1,000名を対象とした「大手企業管理職の非財務資本に関する意識調査」を公開いたしました。

※1 従業員数1,000名以上

実施背景

2022年8月30日に、内閣官房の非財務情報可視化研究会より「人的資本可視化指針」が公表されました。指針の中では、人的資本に関する資本市場への情報開示の在り方に焦点が当てられており、企業の対応方針が整理されています。今後、有価証券報告書における情報開示の義務化なども含めて、より一層企業の人的資本への対応が加速することが予想されます。

 

そこでこの度、前回実施した機関投資家の非財務資本開示に関する意識調査※2に続き、今回は国内の大手企業の管理職1,000名を対象とした企業内の意識調査を行いました。

※2 2022年3月 「機関投資家の非財務資本開示に関する意識調査」

https://www.lmi.ne.jp/news/release/detail.php?id=703

 

調査概要

・調査の方法:インターネットによるアンケート

・調査の対象:調査会社パネルの「1,000名以上企業」の「経営者、課長以上の管理職」を対象

・有効回答数:1,000

・調査実施日:2022年9月22日〜28日

・調査主体:株式会社リンクアンドモチベーション

 

調査結果サマリー

・企業の持続的成長に向けて、大手企業の管理職の過半数が「人的資本」を重視
・人的資本に関して必要だと感じる取り組み1位は「人材活用の最適化」
 2位は「従業員エンゲージメント」
非財務資本への取り組みにおける満足度として「非常に満足」「満足」を選択した割合は、
 人事系部門以外の管理職が29%、人事系部門の管理職では50%以上と現場と人事の認識ギャップが存在する
・「従業員エンゲージメント」を知っている管理職の割合は46%、このうち課題を感じているのは83%と
 非常に高い割合を占める
・自社の「従業員エンゲージメント」向上に向けた課題の1位は「将来的な安心感の醸成」
 年代別で見ると30代の1位は「理念や戦略への共感の醸成」、40代・50代の1位は「将来的な安心感の醸成」

 

調査結果

●企業の持続的な成長に向けて、大手企業の管理職の過半数が「人的資本」を重視(図1)

企業の持続的成長に最も重要だと思う非財務資本について質問したところ、1位「人的資本(51.3%)」が他項目に対して差をつけていた。続いて、「製造資本(15.3%)」「知的資本(14.6%)」「社会・関係資本(14.3%)」と並ぶ結果となった。

 

図1「非財務5資本における重要度」

Q. 近年、気候変動対策や人への投資を中心に財務諸表に載らない非財務資本への注目が高まっています。企業の持続的成長に最も重要だと思う項目を教えてください。

 

<考察>

「人的資本経営」に対する認知が高まり、取り組みが本格化した2022年。様々な調査が行われたが、多くは「投資家目線」での人的資本経営の必要性の言及に留まっており、取り組む社内の意識や認識は明確にされていなかった。今回の調査では、持続的成長に重要な資本として大手企業の管理職の過半数が「人的資本」を重視しており、他資本よりも重要性が高いと認識していることが明らかになった。2022年3月の弊社調査「機関投資家の非財務資本開示に関する意識調査」においても、非財務資本の中で、今後より開示が必要だと思う項目については、エンゲージメントやダイバーシティ&インクルージョン、人材開発を含む「人的資本」が最も高く(70%)、近年注目が集まっている非財務資本の中で人的資本が最も重要であると、企業内外から認識されていることが明らかになった。

 

 

●人的資本に関して管理職が必要だと感じる取り組み1位は「人材活用の最適化(57%)」で、2位に「従業員エンゲージメント(56%)」(図2)

自社でさらなる取り組みが必要だと感じる人的資本の項目を複数選択で質問したところ、1位は「人材活用の最適化(57%)」で、2位に「従業員エンゲージメント(56%)」、3位に「人材育成投資(51%)」という結果となった。

 

図2「取り組みが必要だと感じる人的資本の項目」

Q.以下より、お勤めの会社で取り組みが必要だと感じる人的資本の項目を教えてください。(複数選択)

 

<考察>

戦後の高度成長期からバブル期を通じて、多くの企業が終身雇用や年功序列型の人事制度を設け、企業と従業員は「相互拘束関係」を続けてきた。従業員もまじめに勤めていれば定年退職まで企業が面倒を見てくれるという安心感から忠誠を尽くしていたからこそ、企業が「人材活用」をする、「従業員エンゲージメント」を向上させる重要性は高くはなかったと捉えられる。しかし、現在は人材の流動化が進み、企業と個人の関係は「相互選択関係」に変化した。結果、企業が「人材の活用や育成が計画的に行えていないこと」「従業員エンゲージメントの向上に取り組めていないこと」が課題として顕在化していることが推察される。

 

 

●非財務資本への取り組みにおける満足度として、「非常に満足」「満足」の割合は人事系部門以外の管理職で28%。人事系部門の管理職では50%以上が「非常に満足」「満足」を選択(図3)

自社の非財務資本への取り組みに満足しているかを聞いたところ、「非常に満足(4%)」「満足(24%)」で、満足している管理職は人事系部門以外の部署において3割を切る結果となった。一方、同じ設問に対して、人事系部門の管理職に聞いたところ「非常に満足(7%)」「満足(43%)」で、満足している人事系の管理職は全体の50%以上に至った。

 

図3「非財務資本の取り組みへの満足度」

Q. 自社の会社の非財務資本への取り組みに満足していますか。

 

<考察>

非財務資本への取り組みの満足度やその課題感において、人事系部門以外の管理職と人事系部門の管理職の間に差が生じていることから、多くの人事が、他部署と視界を共有できていないという課題が生じている恐れがあることが示された。2020年9月に公表された人材版伊藤レポートにおいても、経営や事業戦略と人材戦略を「つなぐ」役割としてのCHRO設置が重要視されているが、課題や課題解決後の効果把握に関して人事と現場の認識合わせ(対話)が足りていない状況であることが推察される。

今後、人事はCHROクラスによる「経営レイヤーでの連携」と合わせて、現場の課題感を把握、解決するという「HRBPとしての連携」の強化が必要である。ただし、連携をして課題解決に注力するためには、現場との認識合わせから行わなければ「人事の取り組みは現場の邪魔になっている」という感情的な対立も起こりかねないため、まずは現場と課題認識を合わせることで「現場の課題を解決するために人事が協力してくれる」という状況に変えていくことが重要だと言える。

 

 

●「従業員エンゲージメント」を知っている管理職の割合は46%。世代別で見ると、30代の認知率は50%、40代の認知率は45%、50代の認知率は40%(図4)

●「従業員エンゲージメント」を認知している人のうち、課題を感じているのは83% (図5)

「従業員エンゲージメント」を知っているか聞いたところ「知っている(46%)」「聞いたことはあるが理解していない(35%)」「知らない(18%)」という結果になった。

「知っている」と回答した人を対象に、「従業員エンゲージメント」に感じる課題があるか聞いたところ「はい(83%)」「いいえ(6%)」という結果になった。

 

図4「従業員エンゲージメントの認知度」

Q. 人への投資で注目を集める「従業員エンゲージメント」についてご存知ですか。

図5「従業員エンゲージメントに課題を感じるか」

Q. 「ご自身とメンバー」や「会社とメンバー」の間の「従業員エンゲージメント」に課題を感じることはありますか。

<考察>

「従業員エンゲージメント」の認知度は、若手世代が高いという結果となった。認知をしている人の8割以上が課題を感じているという結果から、今後取り組みの継続に加えて、世代間の認知ギャップを埋める必要性があると考えられる。

 

 

●自社の「従業員エンゲージメント」向上に向けた課題の1位は「将来的な安心感の醸成(44%)」(図6)。年代別で見ると、30代が感じる課題の1位は「理念や戦略への共感の醸成(46%)」、40代が感じる課題の1位は「将来的な安心感の醸成(53%)」、50代が感じる課題の1位は「将来的な安心感の醸成(36%)」「全社的な連帯感の醸成(36%)」(図6)

従業員エンゲージメント向上に向けた課題について聞いたところ1位に「将来的な安心感の醸成(44%)」、2位は「理念や戦略への共感の醸成(42%)」、3位は「仕事のやりがいや意味の感受(40%)」という結果になった。また、年代別の結果は以下の通りである。

 

図6「従業員エンゲージメント向上において課題に感じる項目」

Q. 従業員エンゲージメントの向上に向けて、課題に感じるのはどのような内容ですか。(いくつでも)

<考察>

課題を感じている項目は、「上司や職場」と「従業員」との間ではなく「会社」と「従業員」との間に集中した。「将来的な安心感の醸成」、「理念や戦略への共感の醸成」、「仕事のやりがいや意味の感受」を踏まえると、会社と従業員の対話の少なさ(会社のメッセージを従業員に届ける機会の不足)が解決すべき点だと見受けられる。2010年以降、「理念の共有」の必要性が多く取り上げられてきたことで取り組んだ企業も多いが、「従業員エンゲージメント」における課題として根強く残っている今回の結果からも、多くの企業で取り組みが「打ち上げ花火」で終わってしまっている可能性が見受けられる。人材版伊藤レポートでも、企業理念や存在意義に立ち返る必要性が書かれていることから、今一度取り組み、継続していくことが必要であると言える。

 

研究員によるコメント

本調査を通して、「人的資本」の重要性は投資家だけではなく、管理職まで浸透していることが明らかになりました。一方で、人的資本活用における課題としての人材活用・エンゲージメントという壁も明確になったと言えます。

 

また、非財務情報の中心となる人的資本に関する取り組みの満足度は、取り組みに携わる人事の満足度が高く、他部署の管理職との乖離が生じていました。「取り組みの情報が十分に組織内に伝わっていない」「人事の課題認識が現場の課題感と異なる」などの認識の差が生じている状態だと言えます。認識の差を埋めるためにも、人事はCHROクラスによる「経営レイヤーでの連携」と共に、現場の課題感を把握し、解決するという「HRBPとしての連携」の強化が一層必要になります。今後期待される役割の拡大を実現するためには、人事のケイパビリティとして「課題解決型思考」「事業の目指す姿の描写力」「課題抽出力」などを開発していく必要があります。従来求められてきた問題発見力だけではなく、データによって明らかになった状態に対して踏み込む課題解決力がより重要です。すでに先行して取り組んでいる企業では、課題解決力を持ったハイパフォーマーを人事への異動など、人事機能を強化も始まっています。

 

従業員エンゲージメントについては、「会社と従業員の対話が少ない」という問題が本調査より推察されました。投資家との対話は「決算期」ごとに強制的に設けられる一方で、従業員との対話は「年度」や「個人の評価サイクル」という単位での実施が一般的であり、取り組みの中に「納期」と「目標」がセットで設けられた「会社と従業員をつなぐ取り組み」がないことが課題だと言えます。

従業員エンゲージメントの市場規模が急速に拡大するなど、人的資本の情報開示義務化への対応に向けて、多くの企業で「従業員エンゲージメント」に取り組み始めているものの、「年度行事」的な取り組みでは成果としての変化は見込めません。弊社が、2021年に公表した『「従業員エンゲージメント向上のための効果的なアクションプラン」に関する研究』※3においても、従業員エンゲージメントを向上させるアクションには「具体性」「達成可能性」「期限」の3つの要素を踏まえて継続することが重要だと判明しました。「従業員エンゲージメントの向上」という成果を上げるためには、少なくとも半期に1度は半強制的に定量化し、改善の方向性を考える対話が必要です。従業員エンゲージメントを今後目標として活用するにあたり、「定期性」と「長期性」が施策に盛り込まれているかという点を経営、人事は点検しつつ、「見える化をして終わり」「結果としての指標」ではなく、「成果を出すべき目標」として従業員エンゲージメントを活用することが重要だと考えられます。

※3 2021年12月『「従業員エンゲージメント向上のための効果的なアクションプラン」に関する研究』

https://www.lmi.ne.jp/about/me/finding/detail.php?id=23

 

<本調査を担当した研究員>

株式会社リンクアンドモチベーション ブランドデザイン室 ブランディンググループ グループリーダー 

杉浦心

 

東京大学出身。2014年リンクアンドモチベーション入社後、大手企業向けの組織人事コンサルティング に従事。大手ホテル業の事業再生後の営業力強化・理念策定PJT、大手製造業の管理職を起点とした営業力強化・理念浸透・風土変革PJT、大手製薬業の風土変革PJTなど、大手企業の数々の PJT を推進。データをもとにした採用・育成・組織風土の支援などを担当。

 

リンクアンドモチベーショングループの概要

・代表取締役会長:小笹 芳央

・資本金:13億8,061万円

・証券コード:2170(東証プライム)

・本社:東京都中央区銀座4-12-15 歌舞伎座タワー15階

・創業:2000年4月

・事業内容

組織開発ディビジョン(コンサル・クラウド事業、IR支援事業)

個人開発ディビジョン(キャリアスクール事業、学習塾事業)

マッチングディビジョン(人材紹介事業、ALT配置事業)

ベンチャー・インキュベーション

 

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