CEO 兼 CHROメッセージ

人的資本経営の現状
私は、新卒でリクルートに入社後、主に人材採用に従事したのち、組織人事コンサルティング室を立ち上げました。この経験を通じて、人材や組織が企業経営において極めて重要なアセットとなる時代が到来すると確信し、2000年にリンクアンドモチベーションを創業しました。創業以来、多くの組織・個人の変革を支援し、人的資本に真剣に向き合い続けています。そして、当社自身が社会のロールモデルとなるべく、常に言行一致の姿勢で経営を行ってきました。
昨今、「人材版伊藤レポート」の発行や人的資本情報開示の推進などによって、人的資本経営への注目度が急速に高まっています。組織人事の領域に長く身を置いてきた私としては、「ようやく時代が追いついてきた」と実感すると同時に、「当社にとって大きな追い風である」と捉えています。
しかし、現状には大きな危機感を覚えていることも事実です。2023年、有価証券報告書において人的資本情報の開示が義務化されたことは、企業が人的資本経営を推進する大きなきっかけとなりました。しかし、データ収集に追われ、本質が置き去りにされている現場も数多く目の当たりにしてきました。本来あるべき姿である、「事業戦略と組織戦略の連動による企業価値向上」という基本が何より重要だと考えています。
企業が追求すべきは「One for All, All for One」の実現
そもそも、組織が存続するためには、「組織成果」と「個人の欲求充足」という両輪が不可欠です。どれだけ組織成果を出していても、個人の欲求が満たされなければ組織は継続できません。逆に、たとえ個人の欲求が満たされていたとしても、組織成果が出ていなければ組織は継続できないのです。そして、この二つは重なることもあれば、相反することもあります。この両輪のバランスをとるためには、「One for All, All for One」の実現が何よりも重要です。
だからこそ当社では、経営方針も「One for All, All for One」の視点から掲げています。まずは、会社存続、発展の前提として、法令違反や不誠実が一切存在しない「一点の曇りもない経営」を掲げました。そのうえで、「One」の視点から「ひとりひとりが主役の経営」、「All」の視点から「運動神経の良い経営」を掲げています。環境変化のスピードが速まる中で、企業として変化に柔軟に適応しながら、社員ひとり一人がオーナーシップを持って取り組むことで、組織と個人の双方が最大限価値発揮することを目指しています。
当社の人的資本経営
当社では、人的資本を「人材力(個人のスキル・能力)」×「組織力(エンゲージメント)」と定義し、その向上に向けて積極的に投資しています。特に重要な鍵を握るのが、「エンゲージメント」です。当社の調査でも、エンゲージメントは営業利益率や労働生産性と正の相関関係があることが明らかになっています。
ただし、これらはあくまでKPIであり、最終目標ではありません。私たちは事業戦略と組織戦略を対等に捉え、両者をリンクさせ続けることこそが、中長期的な企業価値の向上とミッションの実現につながると信じています。その成果を測る指標として、当社では「生産性」を重視しています。具体的には、「人的資本ROI」と「社員一人当たりの売上総利益」の向上をKGIとして掲げ、着実に成果を上げています。
社会への責任と使命
現在、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。その中で、社会の要請や風潮に流され、本質を見失っている企業が増えていると感じます。このままでは、日本の国際競争力はさらに低下してしまうでしょう。だからこそ、私たちは人的資本の価値を最大化し、顧客価値を最大化するという好循環を生み出し、社会に良い影響を与え続ける必要があります。リンクアンドモチベーションは、これからも多くの企業変革を支援し、社会のロールモデルとしての責任を果たしていきます。人的資本経営を通じて、企業と社会の未来を共に創り上げていく。その使命に、私はこれからも全力で挑んでいきます。