最新の研究結果

「優れた経営層の特徴」に関する研究結果を公開

2022.12.6

株式会社リンクアンドモチベーション(本社:東京都中央区、代表:小笹芳央、証券コード:2170、以下当社)の研究機関であるモチベーションエンジニアリング研究所(以下当研究所)は、「優れた経営層の特徴」に関する研究結果を公開に関する調査を行いましたので、結果を報告いたします。

はじめに

近年、コーポレートガバナンスコードの改訂、人的資本経営の推進など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。そのような変化の中、経営層もただ事業成果を追い求めるだけではなく、パーパスやビジョンを元にした一貫性のある経営推進や、社内ルールの整備、資本市場への対応等、これまで以上に大きな役割を求められる時代になってきました。このような時代において、経営層は何に注力していく必要があるのでしょうか。

 

今回の調査では、経営層の部下からの評価に着目し、当社が持つエグゼクティブサーベイを使用した360度評価の結果を集計しました。集計結果を元にエグゼクティブサーベイの総合スコアが、上位5%、上位5~20%、上位20~50%、下位20~50%、下位5~20%、下位5%である6群に分類し、各群ごとに項目の偏差値ランキングを作成しました。このランキングから上位5項目を抽出し、部下から評価される経営層の特徴を分析しました。今部下から求められる経営層にはどのような特徴があるのでしょうか。

エグゼクティブサーベイの詳細はAppendix参照

 

<調査対象>

2015年1月~2021年12月に当社が提供するエグゼクティブサーベイを実施した累計84社1537名

<分析方法>

得られた結果を、エグゼクティブサーベイの総合スコアが上位5%、上位5~20%、上位20~50%、下位20~50%、下位5~20%、下位5%である6群に分類。各群内のマネジメントサーベイの40項目の平均値から、全サンプルを母集団として各項目の偏差値を算出。得られた偏差値をランキング化し、上位5項目のみを抽出。

 

調査結果

 

まず上位3群に着目して、部下からの評価の程度ごとにどのような経営層の特徴があるのかを読み解いていきます。

① 理念を評価や制度に接続し、競合だけではなく、自社らしさの喪失等の長期かつ広い視野での脅威やリスクへの対応を行っている。

総合スコアが上位5%に位置する経営層では、偏差値の高い上位5項目として、「潜在的脅威への対策」「理念の浸透方法の工夫」「ナレッジの共有」「リスクに対する予防策」「理念と評価の接続」があがりました。理念を掲げるだけではなく、実際の評価や制度にまで接続できることや、競合だけではなく、自社らしさの喪失等の長期かつ広い視野での脅威やリスクへの対応を行っていることが評価されていると考えられます。

 

② 理念や行動指針を評価や制度に接続し、環境変化をとらえて組織を柔軟に変化させている。

総合スコアが上位5~20%に位置する経営層では、偏差値の高い上位5項目として、「理念や浸透方法の工夫」 「言行の一致」 「評価基準の明示」「理念と評価の接続」「環境変化への対応」があがりました。理念を掲げるだけではなく、実際の制度やプロセスにまで落とし込むことができることや、環境変化をとらえて組織を柔軟に変化させていることが評価されていると考えられます。

 

③ 事業成果の創出に向けて、事業課題や潜在的脅威を踏まえたプロセスや組織体制の構築・改善を行っている。

総合スコアが上位20~50%に位置する経営層では、偏差値の高い上位5項目として、「一体感の醸成」 「効率的な組織体制」 「ビジネスプロセスの改善」「潜在的脅威への対策」 「事業課題の把握」があがりました。事業成果の創出に向けて、事業課題や潜在的脅威を踏まえたプロセスや組織体制の構築をし、組織としての一体感を醸成していることが評価されていると考えられます。

 

次に下位3群に着目して、部下からの評価の程度ごとにどのような経営層の特徴があるのかを読み解いていきます。

④ 社内外のコミュニケーションのハブとなり、不正がなく円滑に組織運営を行っていくことで、事業成果を創出しようとしている。

総合スコアが下位50%に位置する経営層では、偏差値の高い上位5項目として、「社内連携の活用」 「オープンな風土づくり」 「社外ネットワークの活用」「事業に関する法令順守」「葛藤の解消」があがりました。社内外のコミュニケーションのハブとなり、不正がなく円滑に組織運営を行っていくことで、事業成果を創出しようとしている点が評価されていると考えられます。

 

⑤ ルールの遵守や効率性に対する厳しい姿勢が目立っている可能性がある。

総合スコアが下位5~20%に位置する経営層では、偏差値の高い上位5項目として、「労働時間管理の徹底」 「社内ルールの遵守」 「信賞必罰の徹底」「社外ネットワークの活用」「標準化の推進」があがりました。総合スコアが低いという前提を加味すると、ルールの遵守や効率性に対する厳しい姿勢が目立っていると考えられます。

 

⑥ ルールの遵守や利益の創出に対して高い要望は出すものの、経営層として事業創りや組織作りができていない可能性がある。

総合スコアが下位5%に位置する経営層では、偏差値の高い上位5項目として、「高い要望の提示」 「事業に関する法令順守」 「社外ネットワークの活用」「社内ルールの遵守」「利益意識の徹底」があがりました。総合スコアが低いという前提を加味すると、ルールの遵守や利益の創出に対して高い要望は出すものの、経営層として事業創りや組織作りができていない可能性があると考えられます。

 

今回の調査では、部下から評価される経営層は

①ルール遵守や利益創出への高い要望の提示

②ルール遵守や効率性への厳しい姿勢の明示

③社内外のコミュニケーションのハブ機能の発揮

④課題や潜在的脅威を踏まえた、事業成果の創出に向けたプロセス・体制創り

⑤理念の評価・制度への接続と環境変化への対応

⑥理念の評価・制度への接続と長期・広い視野での脅威やリスクへの対応

という段階を踏んでいることが明らかになりました。

 

まず注目すべきは、理念の浸透や実現に着手できている経営層は上位20%程度であり、その段階に至るまでにはルールの遵守や事業成果の創出など経営者としての基礎を徹底していく必要があるということです。また、その次の段階として、理念を浸透・実現するべく、プロセスや制度といった形あるものに接続し、日常から理念を意識できる状態を作ることが重要ということもみえてきました。

 

近年、理念の先の概念として「パーパス」の重要性が叫ばれていますが、経営層はまず前提としてのルール遵守や事業成果の創出ができているかを点検したうえで、自社の存在意義であるパーパスを掲げ、具体的な評価や制度にまで接続していくことが重要ではないでしょうか。

 

Appendix

<エグゼクティブサーベイについて>

経営層のマネジメント状態を診断するためのサーベイ。質問項目は、全体的な満足度を問う「総合満足度(1)」と、マネジャーに求められる「4機能(2)」から構成されている。サーベイでは全40の質問項目に対し、経営層の部下が「何をどの程度期待しているのか(=期待度)」、「何にどの程度満足しているのか(=満足度)」について「非常に期待(満足)している(5)」から「全く期待(満足)していない(1)」までの5段階で回答する。すべての項目の期待度・満足度のスコアから、エグゼクティブの偏差値として総合スコアを算出する。

1)総合満足度(2)経営層に求められる「4機能」

発行責任者のコメント

今回の調査では、当社が蓄積しているエグゼクティブサーベイデータベースから、評価される経営層の特徴を部下評価をもとに分析しました。

 

今回の調査結果から、経営層の成長の初期段階では「ルールやコンプライアンスの遵守」が求められることが明らかになりました。ただし、この部分だけを社員に要望し指摘する経営層は部下からの信頼を損ねるリスクがあるということも見えてきました。また、次の成長段階として「事業成果の創出」が求められることが明らかになりました。社内外のコミュニケーションを結節した上で、長期的なリスクを踏まえた体制・プロセスを創るという2つの段階があることも示唆されました。そして、最も評価される経営層は「ルールやコンプライアンスの遵守」「事業成果の創出」を踏まえた上で「理念の評価・制度への接続」を行っていることが明らかになりました。

 

いわゆる「パーパス経営」の重要性が叫ばれ、様々な企業がパーパスの策定や共有に取り組んでいますが、パーパスがあるだけでは不充分で、実際の事業・組織運営のプロセスやルールに組み込んでいかなければ企業経営として機能しないということでしょう。

 

昨今の競争環境の激化や、労働市場の多様化、投資家からの多面的な期待の中で、経営層には自社の存在意義や事業的価値を見直し、顧客・従業員・応募者・投資家・社会などの様々なステークホルダーから支持される会社創りが求められています。企業経営の難易度が高まる中、舵取りを行う経営層には、トレンドを追うだけではなく、段階を踏まえた着実な自己変革・成長が求められているのではないでしょうか。

 

大島 崇(おおしま たかし)

株式会社リンクアンドモチベーション
モチベーションエンジニアリング研究所 所長

略歴
2000年 京都大学大学院エネルギー科学研究科卒業
2005年 住商情報システム株式会社を経て株式会社リンクアンドモチベーションに入社
2010年 モチベーションマネジメントカンパニー 執行役部長に就任
大手企業向けの組織変革や人材開発で多くのクライアントを担当
同時に商品統括ユニット、モチベーションエンジニアリング研究所を兼任し、新商品を開発
2015年 モチベーションエンジニアリング研究所 所長に就任
2022年 当社執行役員(モチベーションエンジニアリング研究所管轄)に就任

リンクアンドモチベーショングループの概要

・代表取締役会長:小笹 芳央

・資本金:13億8,061万円

・証券コード:2170(東証プライム)

・本社:東京都中央区銀座4-12-15 歌舞伎座タワー15階

・創業:2000年4月

・事業内容

組織開発ディビジョン(コンサル・クラウド事業、IR支援事業)

個人開発ディビジョン(キャリアスクール事業、学習塾事業)

マッチングディビジョン(人材紹介事業、ALT配置事業)

ベンチャー・インキュベーション

 

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