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STORIES 社会に向けて“約束”することで
大企業の変革スピードを速める

社会に向けて“約束”することで、大企業の変革スピードを速める
坂口 昌規

坂口 昌規

総合コンサルティング部門
責任者

2007年新卒入社。グループデザイン室で全社の経営をサポート。2011年、大手企業向けコンサルティング部門に異動し、2014年マネジャーへ就任。2018年、法人ビジネス部門の企画室を兼務し、事業/商品/人材開発を担う。その後、総合コンサルティング部門を立ち上げ、現在は責任者を務める。本プロジェクトでは、プロジェクトマネジャーを務める。

小山 天翔

小山 天翔

総合コンサルティング部門
コンサルタント

2020年新卒入社。一貫して大手企業の支援に携わり、組織変革・人的資本経営コンサルティングのプロジェクトなどを担当。本プロジェクトではコンサルタントとして顧客と密接なやり取りをしながら、組織変革の支援を行う。

業界のリーディングカンパニーであるB社の中期経営計画実現に向けたプロジェクト。持続的な企業成長の実現に向けて、新たなコーポレートブランドを構築するため、「事業領域のシフト」と「サステナビリティの推進」の同時実現を目指す。その実現に向けて、組織の「診断→変革→公表」のサイクルを通じて、社員エンゲージメントの向上へ取り組んだ。

立ちはだかる「無関心」という壁。

立ちはだかる「無関心」という壁。

坂口:B社とのお付き合いは10年以上になりますが、このプロジェクトのきっかけは組織診断サーベイを行い、その結果をグループ各社の社長にご報告したことです。その結果、新たなコーポレートブランド構築のために、私たちの力を借りたいというご依頼を受け、ブランド浸透プロジェクトがはじまりました。

小山:私も坂口さんとともに初期からプロジェクトに関わっていますが、最初はグループの主要3社が対象だったところから、今では国内の子会社やグループ会社、さらには海外のグループ会社なども対象となり、取り組みが広がってきたと感じています。

坂口:スタート時に掲げたのは、持続的な企業成長の実現に向けて「事業領域をシフトさせる」とともに「サステナビリティを推進する」、「そのためにも社員エンゲージメントを向上させる」という目標でした。その中で組織変革に向けて立ちはだかったのは、「内向き」「無関心」という、歴史ある大企業の多くが抱える問題でした。

小山:B社は世界10数カ国、数万人の社員を抱える巨大な組織です。当初は、社員の「内向き」な視点、目の前の仕事以外に対して「無関心」な状況が蔓延し、会社が示す新たな方向性に対して、そもそも興味を持たれていない状態でした。

坂口:このような組織状態への対処には、モチベーションエンジニアリングの原則である、「UNFREEZE(解凍)→CHANGE(変化)→REFREEZE(再凍結)」というステップを活用します。まずはこれまでの価値観や考え方を「UNFREEZE(解凍)」し、望ましい状態に「CHANGE(変化)」させ、そしてその状態を「REFREEZE(再凍結)」するという段階を踏むことで、社員の「変わりたくない」「変わる必要性を感じない」という感情にアプローチしていきました。ただ単に、目指すブランドスローガンを会社が伝えるだけでは、組織が変化するエネルギーは生まれません。巨大な組織を「UNFREEZE」していくために、あらゆるコミュニケーションメディアを駆使して、「内向き」「無関心」という壁を打破することを目指しました。

コミュニケーションとエンゲージメントが
組織を「UNFREEZE」していく。

コミュニケーションとエンゲージメントが、組織を「UNFREEZE」していく。

小山:私は現場でコンサルタントとして施策を推進する立場ですが、世界中にいる数万人の社員一人ひとりに届くように、様々な取り組みを進めてきました。経営の想いを現場に届ける動画コンテンツ、新たな方向性を示すブランドブック、ブランドスローガンに込めた意味や社内施策の背景を伝えるe-ラーニング、職場の対話を生み出すためのプログラム、社内研修コンテンツへのブランドコンセプトのインストール、ブランドを体現した現場の行動を表彰するアワードの設立など、十分な時間をかけて、全体設計し進めていきました。並行して、グループ各社の本部長や部長陣が主体となり、モチベーションクラウドを活用してエンゲージメントスコアの向上を目指す取り組みも進めました。また管理職の方々には、管理職としてブランドをどう体現し、顧客やメンバーとどう向き合ってほしいのかを学んでいただいています。さらにボトムアップの変化を狙って、職場の課長層をブランド推進リーダーに据え、半年に1度のリーダーサミット、3ヶ月に一度の職場ミーティングを開催し、ブランドやエンゲージメントをテーマに対話しています。

坂口:本当に様々な取り組みを、経営陣や事務局の皆さんと、地道に根気強く進めてきました。社内にブランドを浸透させ、意識・行動を変化させていくためには、エンゲージメントを向上させることが必須です。エンゲージメントが低い状態、つまり会社に対する信頼が高まっていない状態では、新しい理念・戦略は浸透していきません。「事業領域のシフト」と「サステナビリティの推進」という概念の統合、あらゆるメディアを活用したコミュニケーションの活性化、エンゲージメント向上に向けた職場改善活動など、複合的な施策とその徹底的な実行によって、B社の組織状態は「内向き」「無関心」という状態を脱し、「変化」へ向かうエネルギーが表れ始めました。それぞれの施策のアンケートにはポジティブなコメントが増え、「変えていく」という意志をもったリーダーが現場に生まれてきています。プロジェクト開始から数年が経ち、ようやく「UNFREEZE」が完了し、「CHANGE」が進んできた感触があります。

変革への姿勢を
内外に示す意義と価値。

変革への姿勢を、内外に示す意義と価値。

坂口:このプロジェクトの特徴の一つとして挙げられるのが、モチベーションクラウドによって診断されたエンゲージメント・レーティングの向上を、中期経営計画のKPIの一つとして組み込み、外部に公表したことです。その最大の意義は、なんといっても企業変革のスピードが速まること。企業を取り巻く市場には商品市場、資本市場、労働市場という外部の3市場がありますが、公表するということは、社内だけではなく、社外の3市場に対しても約束をするということなんですよね。組織が本当に変わろうとしている意志を経営として外部に表明するからこそ、より一層本気で取り組まなければならなくなる。結果として企業全体の変化が加速する。それが公表する意義ですね。

小山:公表することについては私たちの働きかけだけではなく、B社内でも情報開示の方針があったことがうまく重なって、エンゲージメントの指標を開示項目に加えていただけることになったんです。

坂口:組織変革においては、その会社が本当に変わろうと考え、変革の当事者になっていただくことが何より大切です。その重要なピースが「公表」だと思うんですが、B社が本気で変革を望んでいたからこそ、今回の開示に至ったと思います。本来、組織人事領域のコンサルタントはそこにタッチしないのが一般的ですが、リンクアンドモチベーションではそこまで踏み込んでやるからこそ、価値があると考えています。また近年では、持続的な経営をしていくために、業績に関する情報だけでなく、非財務情報と呼ばれるもの、たとえば知的資本や人的資本についても開示していく流れがあり、それらがどう企業価値に繋がるのかを示す必要性が高まっています。私たちはこのトレンドに先行し、数年前から顧客の外部市場への開示と組織内での実践を連動させて、人的資本経営の推進をサポートするコンサルティングサービスを開始していますが、既に多くの顧客とプロジェクトを進めています。

世の中に影響を与えてこそ
“良い会社”の定義は変わる。

世の中に影響を与えてこそ、“良い会社”の定義は変わる。

小山:社員規模が大きく、歴史のある日本の大企業が変わるのは本当に難しいことだと感じます。B社もまだ「CHANGE(変化)」の途中段階ですが、このプロジェクトで「診断→変革→公表」というサイクルを回していくことによって、「すごく変わったよね」と世の中からも認知してもらうのが私たちの目指すところ。そのために、取り組むべきことはまだまだ沢山あると、身が引き締まります。

坂口:一つの会社の変化によって「自分たちの会社も変わっていかなくては!」という意識が業界全体に広がっていく状態を作っていきたいですね。また、組織が変わるとは、本質的にはそこで働く一人ひとりが自立性を取り戻すことだと私は考えています。だからこそ、私たちは変わっていくきっかけを作り、その変化をサポートしていくことが大切です。目の前の顧客が「自分たちが変えていった」という感覚を持てるかどうかが重要だと思うんです。B社でも会社が変わって、それを自分たちが変えてきたんだと思える状態をつくるために、これからも挑戦していきたいです。業績を上げていくことはもちろん重要ですが、社員のエンゲージメントが高まり、生き生き働く人が数多く存在することこそが良い会社だと思います。人的資本に投資した結果、社員が生き生き働くことができ、そして活躍できるようになる、その活躍の集積が事業の成果に表れ、企業の持続的な成長につながっていく。そんな変化を世の中の様々な会社が認識して変化の波が広がっていく。それが私たちの仕事の価値であり、目指す先だと思っています。私個人のミッションとしても、この先もずっと追いかけ続けたいと考えています。